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21世紀以降の社会の仕組みを支える最先端の技術がデビューを待つばかり。

技術を使いこなす智慧の目が問われる現状のヒントを考察します

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■入れ歯は野蛮な治療法 【2002年10月05日】

再生医療のめざましい進展で、また具体的な成果が出ています。

重い歯周病の新しい治療法として福岡の研究グループが開発したものです。ぐらぐらになった歯をいったん抜いて、歯垢や歯石を取り除いて再度植え込み、患者本人の骨髄を注入して隙間を埋め、歯茎の骨を再生させるというもの。今までなら、抜いた歯は虫歯ではなくとも捨てていましたが、再度植え込んで定着させるといいます。

これまでに男女29名に実施して、平均3〜4ヶ月で埋め込んだ骨髄から骨が再生して歯が定着し、約半年後には自分の歯で普通にものが噛めるようになったといいます。そのうち、術後の通院を怠った2例を除く27名は、歯の脱落も起きなかった、(河北新報社9/7付け)といいます。

気になる費用ですが、全ての歯を手術するとしても約250万円で済むそうです。現在のインプラント、総入れ歯などの費用を考えるとそんなに高くはないそうなのですが、さらにビジネスベースでの努力がほしいところです。歯に、250万円かかるのは、ちょっと高すぎだと思いませんか?

今までは、人間は年を取ると歯がダメになるものでした。重い歯周病の治療は総入れ歯が当たり前でした。おせんべいを丸かじりするCMでおなじみの総入れ歯安定剤などの商品もあるくらいですが、その商品そのものが必要なくなってしまうような、新しい治療法です。厚生省と歯科医師会が中心となって進めてきた、「8020運動」(80才でできるだけ20本の歯を残そうというもの)も、近い将来には当たり前になって見直しを迫られるのかもしれませんね。

このように、再生医療は臓器移植に替わるものとして、いま、各国で未来医療を切り開くべく、さまざまな取り組みがなされており、新しい成果も続々と出てきています。その技術の進歩に、現行の医療体制などが追いつかないという面があります。また、ES細胞、クローンなどの倫理面での問題もあります。

再生医療のメリットは、何といっても、

●臓器移植と違って他人が介在しないため、誰も傷つかない
●自分自身の細胞を使うために、拒絶反応がない
●自分自身の細胞の持つ自然治癒力を使う

ことがあげられます。

臓器移植といえば、心臓、肝臓、腎臓が有名ですが、ドナーとなる人が絶対的に少ないのと、ドナーの肉体的、精神的な負担が大きいのです。また、ドナーの死を早める脳死判定という倫理問題が持ち上がり、決着が着いていません。ドナーから臓器提供をうけた患者は、その後一生免疫抑制剤を飲み続けなければならなくなるため、感染症にかかりやすくなります。

この、他人の犠牲によって成り立つ臓器移植の限界を破る再生医療では、たとえば、心臓病や肝臓病とすると、弱った心臓や肝臓から健康な細胞を取り出して、培養と増殖をさせてから本人に戻して、心臓や肝臓の機能を強化できるのようになるのだそうです。また、心筋を取り出して培養して、弱った心臓に定着させる技術も開発されており、将来的にはほとんどの臓器や神経などの器官が再生医療の対象になっていくといわれています。いままで、臓器移植しか治療法がないと宣告されていた病気の人には、なんとも明るい話題です。

この再生医療技術には、大きく分けて2つの流れがあります。

●本人の細胞=体性幹細胞を培養して、治療目的の細胞をつくり移植する
●ES細胞=受精卵からES(胚性幹)細胞を取り出して培養し、治療目的の細胞をつくり移植する

いま問題となりつつあるのは、ES細胞を使うものについてです。これは、受精卵を使います。ということは、そのまま育てば完全な動物や人間になる受精卵を使い、そこからES細胞のみを取りだすので、元の受精卵は破壊されてしまいます。ここに、ひとつの倫理的、法的な問題が発生しています。さらに、この技術自体が、クローン創造にも応用できるものなので、その点からしても倫理上の問題が各方面から指摘されているわけです。

このES細胞は、培養するとどのような臓器や器官にでも成長させられるという万能性があり、万能細胞と呼ばれたりするなど、バイオテクノロジーに携わる科学者たちにとっても、また私たち人間にとっても諸刃の刃となる要素を持っているのです。

こうしたことから、受精卵を使わない再生医療の進展がさらに望まれていると思います。

たとえば、大やけどをした場合でも、本人の口の内側の粘膜は無事な場合が多いわけです。この本人の粘膜細胞から培養した培養皮膚を移植できるという具合にです。この他にも、培養軟骨、培養骨、培養..などいろいろな開発が進められています。

このように、バイオ関連や医療などの最先端の技術の進歩には目覚ましいものがありますが、日本への導入には、お役所などの規制という別な観点からの問題もあります。

現在、政府は日本各地に特別区というワク組みをつくろうとしています。その中に医療特別区というものがあります。これは、世界に先駆けた最先端の医療を実施する地域をつくるという構想です。現在の日本の医療制度では、最先端の医療が実施できなくなっているという認識があるのです。

たとえば、アメリカではすでに認可されている前立腺の放射線治療が、日本ではできないなど、最先端の医療をアメリカで学んだ医者が日本に帰国しても、その技術が生かせないということもあるようなのです。こういった意味でも、医療特別区ができると、アメリカに頭脳流出している医者や研究者が帰ってくることも期待されているようなのです。

役人や日本医師会は、認可して失敗したらどうするのか、と恐れます。また、現行の医療制度にがんじがらめになっています。しかし、時代は刻々と移って行っており、最先端の医療技術を日本に導入するには、まず医療の仕組みやシステムを変えてのびのびと自由にやらせてみる、という大英断が必要になっているということのようです。

私たちも、医療の内容はお医者さんまかせにしてきたことが多いと思いますが、これからは、どのような医療を望むのか、を考えて、選べる時代になっていくのだと思います。また、それを支える最先端の医療が日に日に開発されているのです。楽しみな時代です。

いまから1000年後に「20世紀に使われた総入れ歯の標本」を見た未来人は、やはり、野蛮な時代だったんだと思うのかもしれませんね。
 <Rei>

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