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■北朝鮮という国の背骨 【2002年9月28日】


まったくのところ、予想以上の悲惨で信用ならない発表に、日本人は憤激し言葉を失う北朝鮮の拉致問題です。

報道によると、まだ北朝鮮は、国内向けに日本人拉致とその謝罪を報道していないようです。謝罪を外交カードに日本からの援助を引き出し、アメリカの顔色をうかがい、金体制を延命しようとしているように見えます。ですが、これも北東アジアが動く一歩であるとして、慎重に今後の経過を見ていきたいと思います。

北朝鮮の国でいったい何が行われているかは、かなり前より脱北者の手記などが出版されて洩れ出ていました。その中でも有名になったのは、大韓航空爆破事件の実行犯、金賢姫元工作員の手記で、一気に北朝鮮の内情が日本人にも広く知られるようになりました。

それらの話しがどの程度信憑性があるものなのか、評価は2つに分かれるために、いったいどちらが真相なのか断定できずに来たと思います。しかし、金正日が今回、日本人拉致を認めて謝罪したことで、ごく一部ですがはっきりしてきました。

いままで北朝鮮を賛美してきた人々、メディアはどう対処するのでしょうか。『いままでは事実関係がわからなかったから、拉致はないと発言してきた。しかし、今は明らかになったから前言を撤回する』といった釈明をして、だんまりを決め込んだ人もいるようです。よど号を乗っ取り北朝鮮入りした日本人の一派は、帰国すれば逮捕と知って帰国意志を撤回したもようです。

この金日成、金正日親子体制の北朝鮮は、人口約2300万人中、300万人ほどが飢餓や粛清などで亡くなり、今も国民は飢餓線上をさまよい、軍部のクーデターが起こる確率も上がっているようです。他にも、カンボジアではポル・ポト、こちらは自国民のエリート層、中産階級層を百万人単位で虐殺しています。いま、カンボジアは復興しようにも医師、弁護士などのエリート層や中産階級の商店主、企業家などが皆殺しされているために非常に苦労しているといいます。中華人民共和国の毛沢東、こちらもかなりを粛清し、文化大革命という名の権力闘争を繰り広げています。古くはソ連のスターリン、数千万人をシベリア送りにし、虐殺しています。

このように、マルクスの思想の流れを汲んだ政治家が国造りをすると、最後にはやはり国民を殺していくようになります。どうしてこんなことになるのか、政治家は誰もがそういう面を持っているのでしょうか。それとも、その国民性のなせるところなのでしょうか。

いまでもアジア、アフリカ、中南米にマルクス系の共産主義、社会主義国が残っていますが、どこもあまり国造りがうまくいっていないようです。やはり、これは、人種や民族、政治家に特有の問題があるのではなく、国造りの支柱となる思想に間違いがあるからだと見てよいと思われます。

マルクスは、帝政ロシアを倒し、虐げられていた農民、労働者の国を造ろうとしたわけですが、社会正義を実現したいという情熱は良いとしても、その中心となる考え方に誤りがあったといわれています。

労働者、農民を搾取する支配層を引きずり下ろすことを良しとし、その際の暴力を肯定しています。暴力革命です。そのために、この思想に影響された人々やグループは、人々との話し合いより暴力に訴える方法を簡単に採っていくのだと思います。金親子も、共産主義革命成就のためには手段を選ばないわけです。対外的には、拉致も、爆破テロも、麻薬や武器輸出も、偽金造りも、スパイも、不法入国も、何でもありなわけです。先日も、金正日の息子が偽旅券(1国のトップの息子がですよ!)で日本に入国しようとしたことがあったばかりです。一方、国内では激しい権力闘争が起き、粛清に走っていきます。トップに反対する意見は言えなくなります。

また、支配層は労働者や農民を搾取すると考えるので、そういう社会では、資本家にはなりたくともなれないわけです。なぜなら、自分が努力して資本を貯めて事業を起こしたとすると、労働者から今度は引きずり降ろされる立場に変わるので、それはできないわけです。努力して私有財産を持つことを良しと認めないために、結局のところ、社会は豊かになっていきません。それが、現在、共産主義、社会主義国の社会がいまひとつ豊かに発展していけない理由ではないでしょうか。その根っこには、お金持ちや成功者を嫉妬する、このマルクス的な考え方が巣くっているように思います。

現に、マルクスの思想で国を造ったところ、理論ではプロレタリアート独裁になるはずが、一部のエリートによる特権階級と、限りなく貧しいその他大勢の国民に分かれてしまい、貧しさを平等に分け合う社会というパラドックスが生まれてしまいました。

また、マルクスは宗教をアヘンだとして軽んじ、唯物主義、無神論に流れた結果、どうなったかといえば、彼らは生命の神秘を認めず、死んだらなにもない、そういう世界観を持つわけです。人間を単に働いて一生を終える物体のように見ます。ここにも、人間性の尊厳をないがしろにする考え方が出ているように思います。ですから、これらの国の為政者から見ると、人命は替えがいくらでもきく、吹けば飛ぶような重さしかないものだと思います。

人間を物質の集まりだと考え、人知を超えるものに対する恐れも畏敬の念ももたない社会。そこでは、肉体を持つ権力者が名実共にその国最高の、唯一のトップとなるわけです。個人崇拝社会体制が簡単にでき上がってくるように思います。

北朝鮮の初代、金日成が亡くなったとき、北朝鮮の人々は、心の底から悲しく、恐ろしく、また見捨てられたような気がしたと思います。女性たちは、偉大なる領主さまはなぜ私たちを置いて死んでしまったのか、と嘆き悲しみ、慟哭する声が長く長く何ヶ月も続いたと、脱北者の手記にあります。亡がらは、入念な防腐処理を施されて、廟で公開されているといいます。金日成、金正日親子体制がなぜこうも続くのか不思議に思いがちですが、唯物論と共産主義、1党独裁、言論統制、情報統制、密告制、これらを合わせると以外と簡単にできあがるのだと思います。

しかし、民族にはその民族を導く民族神がいます。どの民族にも、創世譚や民族起源の伝説があります。今では荒唐無稽な話しにしか取れない比喩ですが、国造りを物語として長く伝えようとしているように見えます。これらのどの民族譚にも、共通していることがひとつあります。それは、国造りには、人間を超えた眼に見えない神なる力が最初に働いている、ということを認めているという点です。

この、人知を超えたものを認められる社会ですと、個人崇拝体制の政治体制にはなっていかなくて済みます。金正一が亡くなっても、人生に絶望して何ヶ月も慟哭しなくともいいわけです。この点でも、北朝鮮の人々はほんとうに気の毒だと思います。大韓航空爆破事件の実行犯、金賢姫元工作員は、北朝鮮の呪縛から眼が覚めた後、キリスト教の洗礼を受けたと著書にあります。また、ソ連が崩壊したときに、まっさきに復権したのは、ロシア革命以来打ち捨てられていたロシア正教会だったというのも、単なる偶然ではないように思います。

こうした思想的な欠陥があるにもかかわらず、社会正義を実現する一種のユートピア思想として、マルクスの共産主義が熱病のように広まった20世紀でした。特に、社会経験が少なく不平等や不正義に敏感に反応しやすい学生には、飛びつきやすいロジックだったのだと思います。日本でも、労働組合や学生運動などにもかなり入り込み、よど号を乗っ取り北朝鮮へ行ってしまうグループも出ました。しかし、ロシア革命以後70年ほどを経て、本家のソ連は解体し、この大きな思想実験は人々を幸福にはしないと、結論が出ているように思います。

北朝鮮も、このマルクスの思想による国家実験の解体の時期を迎えています。最初は、言語道断の闇が白日のもとに曝されるのでしょう。私たちは、政府の対応を見つつも、拉致された方々とご家族と共にこれを耐え乗り越えていきたいものだと思います。

見方を変えれば、北東アジアは、まだこの段階なのだといえます。これが終われば、最大のマルクス系実験国家、中国の政治転換が待っています。

どちらにしても、国民が逃げ出す国がまともな国であるわけがありませんね。  
<Rei>

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