

【 イスラムのゆくえ 】
序説
第1部
イスラム国寸描
「ユーラシア異変」
「イスラムとの遭遇」
第2部
文明の概観、経緯、特徴
「イスラム文明拝見」
第3部
「イスラム文明の盲点」
第4部
文明の今後
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2004年の年間テーマ【 イスラムのゆくえ 】
複数の視点と切り口から、このイスラムの行方に迫ってみようと思います。
第3部では、イスラム文明圏の盲点に焦点を当てています。
イスラム圏の課題、現在の混乱を読み解く筋道をます。
序説
「ユーラシア異変」
「イスラムとの遭遇」 第1部 イスラム国寸描
1〜3月
「イスラム文明拝見」 第2部 文明の概観、経緯、特徴 5〜6月
「イスラム文明の盲点」 第3部 文明の盲点 9月〜
? 第4部 文明の今後 12月〜
の括りになるよう書く予定ですが、配信月など変わることも..。
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■ イスラム文明の盲点 - 水の争奪 【2004年9月20日】
水利権 / 垂直のバリア
今週は、イスラム圏、特に中東をもう1つの違った視点から眺めてみます。
イスラム圏と中東とのかかわりは、あまりにも複雑すぎてよく分からないのですが、「水」をキーワードにすると、別な景色が見えてきますね。おつきあいくださいませ。
■水利権
混沌とした中東情勢は、特に日本人には分かりにくいことですが、
かといって、
欧米の専門家がどのような見解や見通しを出してきたところで、中東地域の紛争解決に向けて前進してはいかないようです。
さまざまな提案も出されますが、すぐになし崩しになり、またぞろ同じような闘争と破壊に戻ってしまいます。
ユダヤ教とキリスト教とイスラム教という、同根から分かれた宗教と民族ゆえに、
他を認めると、自分の宗教を自分で否定することになる、という究極のジレンマの中にあります。こうした側面からみると、解決は絶望的にも思えてくるのですが
ちょっと、視点をずらして見ると別なものも見えてきます。
それは、「水」なのです。
中東地域の紛争のほとんどは、どのようにまことしやかな宗教対立の説明をしてあったとしても、結局のところ、この「水」と水源を含む「土地」の奪い合いのようにも見えるからです。
どうして、あのように、際限なく報復しあい譲ろうとしないのか? です。
彼らの死活問題は何だろうと考えると、結局、この「水」にたどり着くのかもしれません。
「水」ですから、譲れないわけです。
つまり、隣り合った兄弟宗教どうしの民族で対立が起きているため、命の次に貴重な水をめぐり、土地の争奪になり、相手の生存を望まないまでの対立を生んでいる。「水」がさらに対立を際立たせているとも言えるのではないでしょうか。
この中東地域は、写真をみても本当に緑はごくわずかで、赤茶けた岩石や砂漠、土漠が拡がっている地域が圧倒的です。
その様子は、ちょっと唐突ですが、
筆者は、火星の地表を写した赤茶けたNASAの写真になにやら似ていると思います。
火星の赤茶けた地表の衛星写真をみた学者たちは、その地表の岩石上に氷河や水がかつてあった痕跡を見いだして、大発見だと言っています。
かつて、火星にも豊かな水の満ちていた時期もあったのでしょうね。
その火星の緑のない地表の様子は、中東地域の緑のない地表の様子にもよく似ていて、驚かされるものです。剥き出しになった川底か、岩場の多い海底のようにもみえます。
そうした地域では、この地上での生存に不可欠なのが「水」です。
こうした地域では、土地の広さは豊かさの基準にはなりません。
それよりも、何リットルの水を実際に使えるのか、で、その年の収穫量が分かるのです。
温帯地域に住む私たちは、収穫量の単位を土地の広さに置きます。畑を何アール持っている、田んぼを何ヘクタール持っている、というと、大体の収穫量、年収が分かります。
それは、雨がほぼ満遍なく降ることを前提にできるからです。
ところが、
雨の少ないイスラム圏、特に中東圏では、土地の広さは豊かさの基準になりません。それよりもまず、何リットルの水が使えるのか、なのです。それで、収穫量が分かります。
「土地持ち」ではなく、「水利権持ち」が、中東では富と力があるわけです。
ですから
イスラムの資料を見ても、古くから、この水の分配については、かなりの争乱と智恵と交渉と汗と涙、暴力そして憎悪も詰まっている問題なのでしょうね。
古い資料には、村の耕作地に灌漑用水をどう分配するかについて、かなり細かく厳密に決まりごとをきめてやっていた様子が出ています。
水源から引くパイプの長さから直径内寸、パイプを引く時間帯、その時間帯に応じたパイプ開放時間、大きな1つのパイプから共同で水を引く場合のパイプ口の分割方法、時間、それらの水路の閉じ方、材質などなど。
水ですから、固体として認識できないため、流出量をどう計算するかで、智恵を絞ってきているわけです。
そして、夜中も複数の見届け人を立てて、公正に分配されるよう非常に神経を使ってやってきています。
話は飛びますが、
日本の自衛隊がイラク復興事業に従事して、ご存知のようにサマワへの「きれいな水」を供給しています。
筆者は、この、自衛隊の「水」供給をみて、日本の政府は、中東イスラム圏の死活問題を分かっているのだなあ、と妙に感心してしまいました。日本の最初の支援が、最新ハイテク品ではなく、「水」の提供なのです。
ご存知のように、
イラクはチグリス、ユーフラテス川がありますが、
イラクの人々はこの2つの川(写真はユーフラテス川)の水を、決して飲みません。水質が悪く、飲めば100%アメーバ赤痢にかかってしまうのだそうです。
ですから、
戦闘で破壊された上水道が復旧しなければ、浅い井戸の非衛生的な水を飲まなければならず、イラクの人々の死活問題なわけです。日本の自衛隊は、そこを援助しているわけです。
■垂直のバリア
「水」の話を続けます。
「ゴラン高原」、「ヨルダン川西岸」といえば、イスラエルとヨルダン、シリアなどの係争地域です。1967年の戦争でイスラエルが占領した土地で、現在イスラエル人が入植しています。
なぜ
イスラエルは、この2つの地域をヨルダンとシリアから奪っているのか、です。
それは、やはり「水」に関係しています。
一般に、中東は雨の少ない地域ですが、その中でも降雨量のある地域もあります。
そのひとつ、レバノンは、地中海から吹き上がる雨雲からの降水量に恵まれてきた地域です。今では2000本程度が残るだけといわれる「レバノン杉」が自生しますが、レバノンの象徴として国旗にデザインされてもいます。
このように、シリアの「ゴラン高原」、ヨルダンの「ヨルダン川西岸」も、そうした水に恵まれた一帯なのです。
そういった地域は、雨の少ない地域に住む人々から羨望の眼差しで仰ぎ見られてきたのでしょうね。
「雨が降る」ことは、いろいろな意味で豊かさを表しています。
イスラエルは、この「ゴラン高原」と「ヨルダン川西岸」を占拠して、ユダヤ人の入植をしています。
ですから
アラブ、パレスティナの人々、ヨルダン、シリアの人々は、自分たちの豊かさを象徴する地域を奪われて、さらに対立を深めているのだと思われます。
モーゼがアッラーから託された土地はイスラエルのものだと主張して、イスラエルは占拠して入植しているわけですが、
現実には、水の豊富なイスラム圏の豊かな農業可能地域を独占しているわけです。
なぜこうした土地戦争になるかといえば、イスラエルが工業国ですから必然的に工業用水を大量に使用するため、どうしても「水源」を確保しなければならないということもあげられます。
そして、欧米各国の先進諸国のライフスタイルを中東の地で再現しようとしますから、圧倒的に水が足りないわけです。
また、イスラエル国内の主な水源である「ティベリア湖」に流れ込む水は、主にシリアのゴラン高原から流れ込むのだそうです。
ですから、イスラエルにとっては、国の安全保障が「核」ではなく、「水」なのです。水源をシリアに握られては、イスラエルの国の制生殺与奪権をシリアに委ねるようなものだからです。
イスラエルは、この中東における「水」を、パレスチナや他の中東諸国と共同管理しようとはしていません。
その逆に、
パレスチナの人々の地下水の汲み上げを制限し、深い井戸を掘ることを禁止し、既にあった深い井戸を潰してしまい、安全な深い帯水層からの水の汲み上げを自国で独占しているというのが実態です。
パレスチナ人が深い井戸を掘れないように禁止し、水の使用を制限しています。
ここまでして、相手の生殺与奪権を握る「水」をコントロールしようとしています。
これでは、
いくら、欧米が政治解決しようとしても、相手に「水」を与えないというのですから、パレスチナも文字通り命がけになるしかないと、思いつめるわけです。
この中東へ、カスピ海から、アラビア湾から真水を精製してパイプラインで引き、各国共同で使うという構想もあるそうですが
関係国はどの国も、自国がこのプロジェクトを仕切るのだと言い、学者間の交流もほとんどなく、共同研究が成立していないのだそうです。
ここまで書いてきたら、何やら、少々、滑稽な感じがしますね。
ですから、
中東の政治家が何か外交をしていたら、それは、武器か水の獲得の交渉をしているとみて間違いないないようですね。
日本が最先端の技術で、真水を大量に供給するプロジェクトをまずイラクを手始めに中東地域へと提供できたらどうでしょうね。案外、第3者ならうまく行くのではないでしょうか。
この辺にも、、ユダヤ、イスラム共に自分たちで問題解決しようとしない甘さがあるようです。
来週は、水平性の話に戻ります、お楽しみに <Rei>
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