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【 イスラムのゆくえ 】

序説

第1部
イスラム国寸描
「ユーラシア異変」
「イスラムとの遭遇」

第2部
文明の概観、経緯、特徴
「イスラム文明拝見」

第3部
文明の課題
「イスラム文明の盲点」

第4部
未来を拓く提言
「文明の今後」

2004年の年間テーマ【 イスラムのゆくえ 】
複数の視点と切り口から、このイスラムの行方に迫ってみようと思います。

第4部は、イスラム文明圏の今後に焦点を当てる最終章です。
イスラム圏の課題に対する提案に踏み込みます。


             序説
ユーラシア異変
「イスラムとの遭遇」  第1部 イスラム国寸描        1〜3月
「イスラム文明拝見」 第2部 文明の概観、経緯、特徴  5〜6月
「イスラム文明の盲点」 第3部 文明の盲点         9月〜
「イスラム文明の方向」 第4部 文明の今後          12月〜

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文明の今後 - イスラムの未来 【2004年12月13日】

    各地で問題化 / 穏健派と国際世論 / 未来を拓くには /
     日本人イスラム教徒の役割 / 終わりに


■各地で問題化

先日、新聞にかなり大きく、

●オランダ国内で、同国に移住したイスラム教徒とオランダ住民との間で激しい反目と小競り合いが起きている、と報道がありました。オランダでは、人口の6%にも当たる80万人ほどのイスラム教徒が住み、社会問題化してきているようです。

●フランスでも、人口比の7%がすでにイスラム教徒であり、問題がいつ表面化するかはわかりません。公立学校でイスラム教徒の女生徒がスカーフを被ることの是非問題でもめ、全ての宗教装具(スカーフ、十字架など)を付けない決着をつけましたが、これには、キリスト教国である国の根幹にかかわる問題だとして、根強い反発があります。

●また、仏教国のタイでは、マレーシア国境近くのタイ南部の数県に住むイスラム教徒がタイ政府と小競り合いを起こし、逮捕されたイスラム教徒が移送中に多数死亡するなどの問題が起こり、問題が徐々に大きくなってきています。タイ政府の武器弾薬庫を襲っては、武器を集めているとのことですから、首都バンコクでの無差別テロの可能性もあります。

●スペインには、11キロ幅ほどのジブラルタル海峡を小船で漕ぎ渡り、毎日、毎日、モロッコからイスラム教徒の密入国者たちが上陸しています。スペイン国内にイスラム教徒が90万人、すでに住んでいるともいわれます。

そうした彼らの村に隠れつつ、今回、イスラム過激派がスペイン国内で10箇所の同時テロを行い、大量の犠牲者を出し、次の選挙ではイラク撤兵を主張するスペイン野党・労働党に政権が転がり込むという事態になっています。

●さらに、中国国内でも、回教系住民と中華系住民の衝突があったと報じられていました。

●ロシアは、チェチェン独立派を名乗るイスラム過激派の襲撃を受け、劇場でも、南部の旧ソ連衛星国でも、学校の子どもにかなりの被害を出しています。

●アフリカのスーダンは、少数のアラブ系イスラム教徒が同じイスラム教徒のアフリカ系住民を統治する国だそうですが、政府(アラブ系イスラム教徒)が同じアラブ系イスラム教徒の民兵組織=ジャンジャウィードを使い、このアフリカ系住民を虐殺しており、国連でも問題にしているものの、なすすべがないようです。

ジャンジャウィードは、馬に乗り、村を襲い、村人の首を問答無用に馬上からチョン・チョンとはねて駆け抜けていくといい、その殺戮方法は、まさにイスラムの手法そのもののようです。

アフリカ系住民は大変恐れ、大量の難民となり、恐ろしさで村に帰れないでいます。

イスラムの戦闘方法は、昔から変わっていませんね。先年にイスラム過激派から爆破されたバーミヤン石窟の仏陀像も、頭部を中心に破壊しています。

他の宗教遺跡でも、仏頭や、人物像の頭部を破壊しています。

現在、イラクで跋扈するイスラム過激派も、人質を取っては頭部をこれ見よがしにはねています。


こうした一連の暴力行為や彼らの戦闘性を、どうやったら止めさせることができるでしょうか。


これは、今では、一番ホットな全世界の共通問題となっています。


しかも、これらの暴力行為を、イスラム教の名をかたり行っていますから、彼らは罪悪感を毛ほども感じてないのでしょう。ですから、一層、たちが悪いわけです。

自由主義世界でイスラム教徒との対立がないのは、アメリカ国内と日本など。イスラム教徒の数が少ない国だけではないでしょうか。

一定数の人口比率を占めると、イスラム過激派の煽動がはじまり、たちまち、問題が表面化していくようです。



■穏健派と国際世論

イスラム教を信仰すればするほど、社会の現状の不満に対して、「戦え」というコーランを自分に甘く解釈して短絡的に行動してしまう思考・行動パターンを繰り返すイスラム教徒に対して、即効性のある説得はなかなか難しいものがあります。

筆者は、

こうしたイスラム過激派を直接説得するのはイスラム教徒でもかなり難しいだろうと思います。彼らは、話し合いによる解決手法を全て拒否しているからです。確信犯なわけです。

ですから、イスラム穏健派の人びと、ごく普通の人びとが納得できるイスラム教義解釈の新展開が必要ではないかと思われます。

そして、

イスラム穏健派と自由主義世界各国がさらに連帯して、世界的な共通世論をつくっていくことが何よりも大事だろうと思えるわけです。

イスラム過激派に入る人々を思い止まらせようと直接説得するのは、イスラム穏健派の人びとや友人や家族、上司、イスラム法学者などでしょう。この穏健な人びとを盛り立て、世界の世論が一致してバックアップしていくことが大事でしょうね。

このイスラム穏健派の普通の人びとに対して、世界の世論の後押しがあるということが、もっと強力に彼らに伝わる必要があると思われます。日本人が誘拐されたときに、イスラム聖職者に口を聞いてもらうだけではなく、ですね。

ここが、今、説得力がないと思われます。今のイスラム解釈ではダメなわけです。暴力=武力手法を捨てられません。

ここがある程度機能するようになれば、イスラム過激派の理論に賛同する一般人が確実に減り、過激派を支援する一般人が減っていき、イスラム各国の警察組織も充実して、過激派が社会から浮き上がり活動できなくなっていくのではないでしょうか。難問ではありましょうが、ここが、今の世界の人びとに出されている課題だということです。



■イスラムの未来を拓くには

イスラム圏の発展を阻むボトルネックを、まず勇気をもって捨てることでしょうね。ざっと挙げてみました。

・暴力=武力解決を捨てる
・女性差別
・寛容さ
・多様性
・イスラム教の相対化
・部族主義から民主主義手法へ

どれも、言うは易く行うは難しく、一筋縄ではいかないものばかりですね。


イスラム法学者や政治家、長老などのイスラム圏の有識者に、

「問題解決手法から暴力=武力を捨てること」は、イスラム教の教えに反しないこと、を人びとに啓蒙していただく必要があります。

対立する人々を殺さず、生存を保障すること。それ自体が、イスラム教徒の寛容の精神を表わす基本であることをです。

アッラーが全知全能であるなら、かなり、全人類に対して寛容でなければ勤まらないのではないでしょうか。現在、地球上にいろいろな宗教・民族・文明圏があるということは、「多様性」というものが認められているということです。

そのアッラーですら認めている多様性を、イスラム教徒はやはり、認めてしかるべきでしょう。

イスラム教徒は善で、それ以外は悪。などというのは、寛容の精神にケチをつけるものではないでしょうか。

ここは、ひとつ、寛容の精神を押し広げて、キリスト教徒の博愛の精神にまで届くほどの寛容さを見せる度量を持たなければなりませんね、イスラム教徒は。

また、

他国に移住して、その国内でイスラム教徒として生きる権利をその民族宗教と同等に主張して、受け入れられなければ暴力=武力に訴えるなどどいうことが続けば、

今後、世界各国は、移民受け入れ、つまり、労働人口の移動に慎重にならざるをえません。注意深く、自国宗教となじみやすいイスラム教徒以外の民族に門戸を開放していく流れになります。

各国とも、イスラム移民に母屋を乗っ取られたくはないからです。自国内に、イスラム教徒の住む治外法権地域を抱え込むことになるからです。

寛容の精神というのは、意見の違う者であっても、この地球上に生きる仲間として、その存在自体を認めるということでしょうが、自国宗教や文化を、他国に移住してどの程度主張するかには、智恵が必要なことは当然のことです。

ここ当分、政治運用の枠組みとして、国民国家というまとまりごとに各国が切磋琢磨する世界が続くことが予想されるからです。

国民国家という枠組みの中に誰しも生きているわけです。国家という政治単位がないがしろにされ、属する宗教だけを基準にして人々が括られるわけではありませんね。ですから、あくまでもイスラム法に則った生活を主張するなら、イスラム国家を運営する国に帰るしかないのではないでしょうか。もしくは、移民先の民族宗教・政治手法を尊重して受け入れていくか、なわけです。

宗教・思想・生活手法の違う人びとの存在を認めて、問題解決手法から暴力=武力を捨ててこそ、イスラム圏がこの地球上の各文明圏と共存する道を選んだということになるのでしょうね。


また、


マホメットの手法を、発展的に解消していくことも、今後の啓蒙課題ですね。

もはや、話し合いや打ち合せ手法を採るのが政治の世界でも常識となり、テロや暴力手法を採る限り、近代国家として仲間入りする資格に欠けるということをです。

今現在、マホメットが生きているとしたら、果たして、どうするでしょうか。

「戦え」とイスラム教徒を鼓舞したアッラーの真意は、まず、弱い自分、怠ける自分と戦え、と自らの不信心との対決を叱咤激励しているものであり、「戦う」意味を履き違えて、単純に他人や他民族の攻撃に使うことではない。と言うのではないでしょうか。

「話し合いによる問題解決」を図るほうが、民族の智慧と忍耐が必要な分、文明としても高度なものに成長できることを理解していただき、それを目指した取り組みをしていただく必要があります。

そして、イスラム法学者や政治家、長老などの有識者の智慧を集め、新しい時代のイスラムの行動指針をまとめて、望まれるイスラム圏の未来像、人間像を人びとに提示していただく必要があります。

そのビジョンを実現する手法には、全員平等という水平性を基礎に持ちながらも、男女にかかわらずに優秀な個性や能力を評価して引き立てて活動の機会を与えていくピラミッド思考を取り入れることもぜひ必要ですね。

アッラーだけが偉大だとする巨大な文鎮型では、人びとをなかなか組織立てられるものではありません。

アラファトの棺を無秩序に取りかこむ「平等な」群集がいるだけとなり、モノゴトの段取りに合わせて効率的に動くこともままならない状態に陥るだけなのです。

あの、アラファトの棺をむかえたラマラの広場全体は、見ようによっては、ひとつのアメーバ細胞が活動して次第に核が移動して細胞分裂して(アラファトの棺が広場から出て行く)ような、混沌の中で目に見えない方向性に身をゆだねているかのようにも見えたのです。

ああいった光景は、欧米・日本型文明では、まずありえないでしょうね。



■日本人イスラム教徒の役割

また、筆者は、日本国内に住む、一説に20,000人ともいわれる日本人イスラム教徒の方々にもお願いしたいことがあります。


それは、


日本語で書かれたイスラム教徒の資料書籍類を読みましたが、イスラムが世界や日本から誤解されていることを異口同音にかなり強調してあり、嘆いています。

それもありましょう。

では、今後の展開として、「日本人イスラム教徒として仲間に対して何ができるのか」にぜひ踏み込んでいただきたいな、と思います。仲間のイスラム教徒に、自由主義世界の先進国となっている日本社会の真似られる点、発展する方法論としてイスラム諸国が取り入れられる点、考え方などを伝えてあげていただきたいな、と考えます。その役割は、日本人でイスラム教徒という方々がもっと積極的に担っていただきいたいものだ、と思うからです。

自由主義世界の中で日本人のイスラム教徒として日常生活を送る様子は、つまりは、やがて来るイスラム圏世界の未来の繁栄する姿でもあるということをです。

それが具体的であればあるほど、イスラム圏の方々もビジョンを描きやすくなり、

自由主義世界の中でイスラム教徒として生きていく姿を、肯定できるようになるのではないでしょうか。自由主義世界と融合した姿、融合させる方法論を具体的に提示していけるのではないかと思われるからです。

自由主義世界や他の文明圏を否定してみても、しようがないわけです。あるものはあるわけですので。

あるものの中から、個人や国家に取り入れるべきものがあれば、取り入れていったら良いわけです。

その際に、日本人のイスラム教徒は、先輩としてもっと積極的に貢献していったら喜ばれるのではないでしょうか。


■終わりに

2005年1月末に迫ったイラクの選挙が滞りなく実施され、それで民主化への弾みを付けられるかどうか。「正念場」だ、と識者は異口同音に言っています。

もちろん、これもひとつの「正念場」でしょう。イスラム圏の民主化は、こうした「正念場」が次から次へと現れ紆余曲折しながら、100年、200年をかける大きなうねりとなってゆっくりと進んでいくものではないでしょうか。

その間、私たちは、地球の仲間として、イスラム圏の人びとが未来へと脱皮していく試行錯誤の姿を暖かく、忍耐強く、かつ智恵をもって応援していくことになります。 「イスラムのゆくえ」コラム(了) 
 <Rei>

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