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【 イスラムのゆくえ 】

序説

第1部
イスラム国寸描
「ユーラシア異変」
「イスラムとの遭遇」

第2部
文明の概観、経緯、特徴
「イスラム文明拝見」

第3部
文明の盲点

第4部
文明の今後
2004年の年間テーマ【 イスラムのゆくえ 】
複数の視点と切り口から、このイスラムの行方に迫ってみようと思います。

第2部では、イスラムの中心部であるアラビア半島に目を向け、・イスラム文明が起こってきた経緯や、特徴・イスラム文明が担った役割をみてみようと思います。
「そもそも、なぜ&どのように、イスラムが起こってきたのか」から入ってみます。


             序説
ユーラシア異変
「イスラムとの遭遇」  第1部 イスラム国寸描        1〜3月
「イスラム文明拝見」 第2部 文明の概観、経緯、特徴  5〜6月
?            第3部 文明の盲点          8月〜
?            第4部 文明の今後          10月〜

の括りになるよう書く予定ですが、配信月など変わることも..。

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イスラム文明拝見 - 役割 【2003年5月3日】  
文明の中継者 / イスラム商人



■文明の中継者

ご存知のように、

イスラム教は、西暦570年頃メッカに生まれたマホメット(ムハンマド)によって興り、アラビア半島から周辺地域に隊商ルートに乗って拡がっていったといわれます。

この7世紀中頃から12世紀ごろまで、勢力を最大に拡大していったイスラム圏は、「東」は現中国西部まで、「北」はコーカサス地方まで、「西」は地中海端のマグレブ地方一帯からサハラのアフリカまで、一大勢力圏を築きました。

ですが、それ以降は、徐々に停滞し始め、勃興してきた西洋キリスト教圏に押されて負けていき、近代化が上手くいかず、18、19、20世紀と、西洋各国から各イスラム地域は分断されて植民地化されてしまうことになりました。

第二次世界大戦後、独立を果たしたとはいえ、近代化が上手くいっているとはいえず、中東をはじめイスラム圏は今でも混迷のなかにある通りです。

この、イスラム文明は、世界の中でどんな位置付けにあるものでしょうか?

いろんな資料を読んでいるうちに見えてきたのは、イスラム文明が、文明の中継者としての働きをしたということです。

現在の西洋文明全体の基礎となったのは、古代ギリシャ文明(今から約4000年前)だといわれますが、古代ギリシャ文明が西に伝わり、古代ローマを経て、ストレートに、現在の西洋文明が出来上がったものではないということです。

古代ギリシャ文明と古代オリエント文明が融合して ⇒ ヘレニズム文明といわれたものが、東へと伝わり、ビザンチン、インドに継承されています。

インドは、ご存知のように古くから文明の高みがあり、古代ギリシャ文明 ⇒ ヘレニズム文明の文物を受け入れられる知性の素地がありました。

これを見ても、文明など高みのあるものは、それを受け取る力がないと直接受け取れないのだ、とわかりますね。

一方の西洋キリスト教圏は、まだこの頃は、ほとんど文明と呼ぶには程遠い状態です。

こうして、ビザンチン(=今のイスタンブール)に集約された古代オリエント文明や、インドに流れ込んだ古代ギリシャ文明の文物などが、隊商や交易船による交易ルートを経て、アラビア半島にもたらされています。

当時、アラビア半島の人々は民族ごとのすぐれた分野をこう見ていたのだそうです。

・中国人   − 技術
・ギリシャ人 − 哲学、文学、医学、数学、化学、地理学
・アラブ人  − 詩と宗教
・ペルシャ人 − 王権と政治
・トルコ人  − 戦闘技術
・インド人  − 数学、ゼロの観念、天文学、暦法、医学

彼らは、放牧と交易を生業にするくらいですから、新しい情報に敏感で取り入れます。古代ギリシャ文明の粋を、インドから間接的に貪欲に取り入れ、学び、かなり大量の古代ギリシャの書物などをアラビア語に翻訳しています。

アリストテレスの哲学著作「形而上学」「自然学」、新プラトン派の著作「国家論」、ガレン医学書、その他科学書などなど。イスラムの大学には、当時のイスラム圏各地から優秀な留学生が集り、知的生産の一大拠点となっていたわけです。

ですから、10、11、12世紀当時の世界では、イスラム圏が頂点に達して輝き、勢力的にも拡大し、学問も進み、人々も文物も集り、とても繁栄していたのだということになります。

西洋キリスト教圏は、このイスラム圏を通して古代ギリシャ文明の粋を吸収していくのです。アラビア語に翻訳された古代ギリシャの書籍を ⇒ ラテン語に翻訳して行くようになります。

西洋キリスト教圏が古代ギリシャの文物を自分たちの力で直接翻訳できるような力をつけたのは、ルネッサンス頃のことで、フィレンツェの有力なメディチ家では、コシモ・デ・メディチが私費を投じて古代ギリシャ文献の翻訳を進め、図書館を市民に開放しています。

この16世紀頃からようやく、西洋社会では原書から古代ギリシャ語の古典を研究できるようになったわけです。

ですから、イスラム文明というのは、古代ギリシャ文化を基礎にもち、インド・イラン・シリアの先進文化も取り入れたもので、交易を通して拡がった国際性豊かな文化だといえます。

西洋文明が成長する土台づくりを助けて、古代ギリシャ文明を伝えるという役割を果たしていたといえると思われます。



■イスラム商人

イスラム文明を語るうえで外せないのが、イスラム商人です。

地球には他にもさまざまな文明、文化圏がありますが、イスラム文明を特徴づけるひとつとなっています。

「交易」というのは、人と人が集るところで栄えます。

つまり、商業が栄えるということは、その文明が都市型社会を作る文明だと言えると思います。情報と文物が大量に行き交うわけです。

イスラムといえば、アラビア半島の砂漠地帯。人口も雨も緑も少なく、人々はオアシスに集中して生きている。資源と言えば、不毛の砂漠地下にあるオイルだけというイメージが強いですね。


ところが、行ってみると、すごい商業都市なのでイメージとのギャップにびっくりすると言います。

今のイスラム圏の貧しさをみれば、都市型社会というと悪い冗談のようにも取れますが、それは、今現在の商業が戦争で振るっていないのと、イスラム文明自体がひとつ前の文明で古くなっているので、現在の視点から見るとそう見えるのだと気づかされます。

オアシスに寄せ集って生き、資源は乏しい。(発見されたオイルが近代産業として成立したのはほんの19世紀半ばです)


そうすると人々は智恵を絞って、他所からの文物を他所へ移動させて、利ざやを稼ぐ商業が発達していくようになったのではないでしょうか? パラドックスのようですが。世界の東西文明をつなぐ交易ルートとして古来賑わってきた地域でしょうね。

メッカの街も、マホメット以前から、このアラビア地方の霊的な聖地として、各地から人々や情報・文物が集るオアシスであり商都でした。

マホメットも、霊的啓示を受けるまでは、メッカの裕福な商人で、自分でも隊商を組んでダマスカスなどの商業都市へ出向いていたとあります。

マホメット以後100年ほどで、一気に広範囲にイスラム教が拡がったのも、この商業都市から商業都市へ、オアシスへ、点を結び合わせたものだから、可能になったのだと思われます。

ですから、逆に、当時の世界で、交易がどの規模で行われていたかを示しています。驚くほど広範囲ですね。

その商業の規模は、地元の市場内に店を出して、比較的日常製品を扱い、小額の資本金で回していく小資本商人や、

隊商を自分で引率して、交易地へと足を伸ばすキャラバン商人から、

インド商人やユダヤ商人、アルメニア商人、ギリシャ商人、中国商人、ベネチア商人、ジェノヴァ商人、東インド会社など、イスラム圏以外の取引相手に多品目を扱い商売をしていく大資本商人がいます。

どちらにしても、都市の中で、商人は経済はもちろんですが、宗教・政治・軍事・情報などに非常に影響力を持っている、基本的にそういう社会で、それがイスラム文明の特徴のひとつになっているわけです。

こうした各地の商都で、イスラム教に改宗するよう迫るわけですが、

イスラム教に改宗したら、税金を無料にする。異教徒のままなら、税金を払いなさい。でも払ったら、イスラム勢力が統治する中でも異教徒のままで商業をしてよい、生活してよい、財産も没収しない。という方法だったようです。

ここでいう「異教徒」は、兄弟民族のキリスト教徒、ユダヤ教徒だけを指し、その他の宗教を奉ずる人々は異教徒でもなく、まだ、人間以下の存在にすぎないという認識ですね。

ですから、各地の商人たちは、その土地で長年信用を築き商売をしてきていますから、税金を払わずに現状の生活を続ける方法として、続々と改宗したのだそうです。

布教、改宗も、どこか商人風ではありませんか?

こういった、交易や商業が生命線の都市型文明のもうひとつの特徴は、政治事情や隣国との関係などの事件が起こると、交易の盛衰にすぐに影響を受けてしまい、時代によって都市の栄枯盛衰が激しくて安定しないことです。

つまり、時代により、その文明の中核都市がころころ変わる、その中をさまざまな情報や文物、人が移動する、ネットワーク社会というのがイスラム圏なんですね。 <Rei>

来週は、アラビア半島に住む人々のルーツを眺めてみます、お楽しみに

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