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■デフレの効用 【2004年8月16日】
ベル・エポック / 竹の節
経済をテーマにしたコラムでは、「デフレ」に付いたマイナスの先入観は
正しい認識ではないことをお伝えしています。
今週は、「デフレの効用」というものを取り上げてみます。
■ベル・エポック
19世紀後半から20世紀前半の第一次世界大戦前まで頃のヨーロッパを
「ベル・エポック=よき時代」と呼んだりします。
社会、経済、文化面でも次々と新たな潮流が生まれ、人々が言論と行動の自由を獲得した時代です。
電力、発電所、配電網・送電網、内燃機関の発明
株式会社、保険会社、証券取引所の設立
健康保険、労災保険、失業保険、老齢年金の導入
パリ万博、地下鉄、自動車、映画の興隆
などなど、今日の私たちの社会生活の姿を形づくる基礎となる大きな発明や新しい産業が次々に登場した時期でもあります。
もちろん、アール・ヌーヴォーなどを始め、芸術全般に渡って豊かな創造活動がみられるとおりであり、芸術家を輩出しています。
その後は戦争の世紀に突入しますから、19世紀後半から20世紀前半までの時期を、輝かしい光に包まれたひと時の華の時代として、「ベル・エポック」と呼んでいるわけです。
実は、この「ベル・エポック」の時代こそが、「デフレの時代」なのです。
1873年から1896年までの24年間を経済史の専門家は「グレートデプレッション=大不況」と呼ぶのだそうです。毎年、24年間、価格が年平均2%づつ下がり続けたのだそうです。
この19世紀後半は、各国間の大戦争がなく平和が続いていました。
人々も戦争で死ぬこともなく、人生を全うして生きることができ、その持てるエネルギーを創造的に使うことができて社会・文化も花開いているのです。
つまり、
「デフレの時代」は、活動のエネルギーや創造性を戦争に振り向ける必要がありません。
戦争から開放された人間の活動エネルギーや物資などを、人間社会を向上発展させるためのエネルギーとして、各分野で使うことができる時代なのです。
ですから、
この年々2%づつ価格が下がり続ける「デフレの時代」に、リストラや倒産も多かったのですが、次の時代の基調となる大きな発明や社会の新システムができあがったり、新技術によるこれまでになかった新しい産業が起こったりしています。
そして、時代は巡り、100年後の今、再び「デフレの時代」を迎えているというわけです。
とすると、
これから、どんな時代が来るかは、ある程度想像できますよね。
そーなんです。
これから21世紀、22世紀の社会の基礎となる新技術が発明され、その新技術を使った新しい社会システムや産業が興り、またたくまに全世界に拡がっていく。そうした時代を迎えているというのが、今回の「デフレ時代」の意味だろうと思われます。
こうした経済史の観点から現在の「デフレ時代」を見れば、次世代社会の基礎となる新技術や新システムの発明と構築に、日本という国がどれほど期待されているか、分かるのではないでしょうか。
モノづくりのベースとなる技術特許を世界に対して年間1兆5000億円を輸出し、特許の輸入は5000億円余りなのが、日本です。
すでに、車でみても、トヨタのハイブリッド車仕様レベルが当たり前に求められるニーズとなり、トヨタが次に何を出してくるか、に世界の自動車業界の関心があります。
ケータイ電話でインターネットに接続できるようにしたiモードも、そうしたひとつですね。
iモードの時代的な意味づけも明確になりましたが、その一番は、パソコン全盛時代を終わらせたことだと思います。インターネットは、据え置き型から持ち歩き型に変わったわけです。
ビル・ゲイツさんの築いた据え置き型パソコン王国時代を崩したわけです。
しかし、まだまだこれは、旧来の技術の延長上にあるもので、大したことではないように思えます。
とはいえ、
このように、世界の人々は、日本が最新の技術とコンセプトで、次に何を出してくるかに注目しているわけです。今後、今までになかったまったく新しい技術の発明、その産業などなどの登場が期待されているわけです。
日本人が担う時代の要請の大きさは、日頃感じているものよりも、歴史的な観点からみればずっとずっと大きいことに気付かされますね。
■竹の節
デフレは、1国の金融・財政政策をうまくやれば解消できるといったものではありません。
インフレ時代に戻れば活況が戻ると考えて、
・デフレになったのは政府が無策だからだ
・デフレ脱却できないのは政府が無策だからだ
・デフレ不況だから、ウチの会社が業績が悪いのはしょうがない
と考えるのは、マトを外しています。
デフレは、国の金融政策ひとつでどうこうできるものではなく、人類の歴史という流れの中で現れる現象だからです。
強いてあげれば、多くの人々が「平和」を望んだということでしょうね。
戦争をせず、平和に過ごしたいと多くの人々が望んだ結果、立ち現れた世界です。
戦争しませんから、各物資も人命も失われません。人々は人生を全うして、そのエネルギーを各分野で発揮するようになります。各商品は過剰生産になり、ニーズに合ったもののみが買われて、商品や企業の淘汰が行われます。
戦争で人命が失われず人手も余りますから、能力の優劣がきわめて明確に出て、社員として生き残るには会社に利益をもたらす高い専門技能が必要となります。その会社で必要な技能を磨き続けなければ、リストラの対象になります。
企業経営としてみれば、あらゆるコストの贅肉を削ぎ落として、得意部門に特化して研究開発に資本を投下していきます。
ですから、窓際族という人種は、企業に居ようがないわけで、リストラされていきます。
ひと言でいえば、競争が激しいわけです。
こうしたデフレの時代は、何に例えられるものでしょうか?
筆者は、「竹の節」に近いものではないかと思います。
竹は驚くほどのスピードで、まっすぐに伸びていきますが、そのままの状態で無限に成長するものではなく、節があります。
一定の方法である程度伸びると、成長を止めて、今度はギュッと堅く緻密な組織をつくりはじめ、節を作ります。
その節が出来上がると、竹は次の成長の時期を迎えて、また、驚くほどのスピードで一定の高さまで成長していき、さらにまた節を形成する時期を迎え、作り終えると、また次の節まで成長します。
そのように、竹を見ていても、
一本調子で最初から最後まで成長するものではないことが分かります。もし、竹に節がなかったら、あの高さまでは成長できず、ちょっとした風で倒れてしまうでしょうね。
節のあることが、竹があのように高く成長できるカギとなっています。
きっと、このデフレというものも、
竹の節と同じように、文明社会の無限の成長には欠かせない、重要な役割があるのだと見てよいと思われるのです。
非常に競争が激しいですから、競争に負けてリストラに遭ったり、働いていた企業が倒産したり、就職活動してもなかなか決まらなかったり、企業経営者も新製品が上手くいかずに倒産したり...
当事者としては、時代の波に翻弄されてアップアップしている感じですし、負けてメゲますし、
リストラに遭ったり、企業倒産に追い込まれたりして、自殺してしまう人も出てきます。現に、日本の中高年の自殺率が高く問題になっています。
ですが、
デフレの時代というのは、こういうものだと知っていたらどうでしょうか? 「死」まで思いつめないで済むかもしれませんね。
筆者は、このデフレが原因となった自殺率を下げるには、正しいデフレ知識を知ることも重要だと思います。その点でも、リストラ・倒産等の苦しさを大きく報道するマスコミの態度は、デフレの全体像を知らせずに偏っており、人々をミスリードしていると感じています。
たとえ倒産に追い込まれたとしても、「ああ、今は、竹の節を作っている時代なんだなぁ」と思えば、そういう時代に自分のできることは何か?
を考えて、何らかの形で再起していけるものだと考えるからです。人生はワンパターンでは進みませんし、どのように生き抜いたかが大事なんですしね。
その意味でも、
実は、「デフレの時代は敗者復活の時代」だとも言われるのです。
会社には、自分の技能を売りますから、ダメだと言われたら、次の評価する会社に自分を売り込むことが可能です。どこも採用しなくとも、自信があるなら起業して世に出すことも可能です。
会社には、人生の時間を売るのではなく、技能を売るわけです。終身雇用ではなく、技能を売るわけですから、人材の移動が非常に激しくなり、それがまた、社会・経済を活性化させるわけです。
つまり、サラリーマンが長く働いて年々徐々にお給料が上がるのを楽しみに生きる時代ではなく
むしろ、お給料を上げたいなら、技能を高めて転職していく、そういう時代ですね。
これは、
アメリカなどは、すでにそういった社会・経済の姿になっていますから、日本も後を追いかけているというわけでしょうね。
ですので、
日本人が担う時代の要請の大きさからみれば、競争が激しいのは、ある意味で当然のことなんですね。次世代の社会の基礎となるものを生み出すのですから、優秀な人々の中でもさらに切磋琢磨していき、その中からより良いものを生み出していくということですね。
また、これまでになかったモノ等を世の中に提案していくにはさまざまな強い個性の持ち主や変人(?)が必要です。
別な言葉でいえば、自分のやりたいことを徹底的にやったら、評価されていく時代になったということですね。
こうした「竹の節」の時代には、徹底的に考え抜く知力と行動力が試されているといえます。
今回コラムを読んで、デフレの時代に生きる勇気とワクワク感を少しでも感じてくださったら、筆者冥利につきるものです。
来週は、デフレ時代を生きる智恵を見てみます、お楽しみに <Rei>
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