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デフレ期は自己投資の時代  【2004年8月23日】 (経済関連)
    
コストカット / 日本の技術のすごさ / 19世紀末の先例



智慧コラムで、「デフレ」に付いたマイナスの先入観がひっくり返りましたでしょうか?

今週は、デフレ期の乗り切り方を考えてみます。


コストカット

企業でも個人でも、共通していえるデフレ期の乗り切り方は、


「将来への投資をする」ことだといわれます。


企業経営としてみれば、「特化と集中」が大事だといわれ、インフレ時代に大きくした会社事業内容を見直し、リストラでスリム化して、次世代商品・サービスを開発すべく、新技術への投資をしていきます。

先週、たとえに出した「竹の節」の時期に入ったわけですので、モノも人手も少ないインフレ期のように、作れば売れる時代ではありません。

同じような商品・サービスが溢れていて競争が激しいですから、

競争力のない商品・サービス、それを提供している企業は淘汰されて、市場から消えていくしかありません。

ですから、採算の採れない部門は閉鎖、縮小され、人員も利益を出す部門へ配置転換して集中させ、企業全体もリストラします。

何といっても、ギュッと詰まった「竹の節」の時期ですから、

ムダや、利益の出ないことはできなくなります。徹底したコストカットが必要になります。

このコストカットですが、

単に、人員整理をし、給料を抑えたところで、いまあるコストを10%、20%下げるということだけです。そうそう極端にコストカットできるものではありません。

コストカットがさらに進むと、

商品をさらに安く生産するのに必要な新技術の開発に行き着くことになります。

他社に真似のできない新技術を開発して、この技術を使い、安く、新しい価値を持った商品を開発して、それを市場に投入して、お客さんに喜んでもらい購入してもらうことを考えるようになるからです。

こうしたデフレ期の企業努力は、毎年より良い商品・サービスが安く手に入るということですから、人々に受け入れられます。

毎年物価が下がり続けて、そして、より良い商品・サービスが登場するのですから、生活する人間はけっこう楽しみがあります。

というのも、物価下落率より、賃金の下落率の方が緩やかに進むのだそうです。その分、ゆとりも出るということのようです。

つまり、

賃金を下げるのは、企業経営者にとってもなかなかできにくいものなんでしょうね。利益が出ていないから賃金を下げたい、でも、下げるといえば従業員の働く意欲の問題にもなりますから、あまり正面から杓子定規には適用できない、辛さがあります。

ですからなおのこと、新技術の開発、新製品の開発への投資に移って行くことになるのではないでしょうか。


個人として考えてみれば、


企業の新技術の開発は、新しい技能を身に付けて、就職や昇級・昇給につなげるということに当るでしょうね。

リストラされた、給料が下がった、なかなか就職が決まらない、といった状況が出てきた場合は、ここは「竹の節」の時代だと腹をくくって、自己投資をして、次の機会に備えるのが賢明だということですね。

そうした自己投資をして専門知識と技能を持たないと、人手も余って競争も激しいですから、個人も企業から必要とされなくなるわけです。



■日本の技術のすごさ

モノづくり大国の日本ですが、どの程度のリストラが進んだ技術大国かは新技術の成果に出ています、見てみましょう。


中国最大の製鉄所のひとつに「安鋼」というところがあるそうですが、生産実績は日本の新日鉄の10%、230万トンを生産しますが、従業員は新日鉄の10倍。つまり、生産性は新日鉄の1%です。

19世紀初頭の産業革命直後の鉄鋼業では、当時、粗鋼を1トン生産するのに石炭を30トン使用していました。100年後の20世紀初頭には3トンとなり、

現在、高い技術を持つ日本の鉄鋼業では0.6トン使用します。そして、石炭ゼロの生産方式も実用寸前まできています。それに対して、アメリカの鉄鋼業では1トン、中国の鉄鋼業では1.5トン使用します。

中国の2003年の鉄鋼生産量は2億トンで、世界最高記録ですが、自動車用の鋼板は作れないのだそうです。中国製の鋼板で自動車を作ろうとすると、あちこちに割れやヒビが入るのだそうです。

日本製の鋼板ならば、どんなカーブを持った車体でも、一発のプレスで何の欠陥もなくきれいに仕上がるのだそうで、中国も自動車産業を自国で育成しようとしていますが、その車体の材料の鋼板は日本製を使わざるを得ないのだそうです。


アメリカも同様です。


9.11の中枢同時テロで破壊された世界貿易センタービルですが、ご承知のとおり、使用されていた鋼材は全て日本製でした。

1本35,000キロにもなるH型鋼と呼ぶ鋼材だそうで、70フィート、20m。こうした長尺鋼を作る技術は日本にしかないのだそうです。アメリカの鉄鋼業界ではできないのだそうです。

もちろん、長尺のH型鋼を使えば、高層ビル建築の骨組みをとても簡単に短期に作ることができます。ですから、今回、世界貿易センタービル跡地に建つ高層ビル群にも、もちろん、日本製の長尺H型鋼が使用されます。


また、セメント。

世界で一番セメントを生産している国は中国で、2003年実績では7億トン生産しています。日本の生産は9000万トン。

中国の建築ブームの凄まじさが垣間見られるデータですが、

何と、売上げベースで見ると、差がないのだそうです。

つまり、日本製セメントは中国製より8〜9倍の値段で売れる。それは、日本のセメント焼成温度が平均1300度なのだそうで、それはセメントの強度として出るのだそうです。中国は1100度程度。この焼成温度1300度を出す技術が中国にはないわけです。

ですから、中国は7億トンものセメントを作りながら、自国の高層ビルを建てるときには、日本のセメントを基礎部分に使わないと、崩れるので高層ビルが建てられないわけです。

ご承知のとおり、中国はいま、凄まじい高層ビル建築ブームですから、中国向けの日本製セメント輸出が急増しているのだそうです。


さらに、液晶の場合。

液晶の原料はガラスですが、液晶用の大型ガラス板は幅2.5mX長さ3m。この大型ガラス板を割らずに遠くまで運ぶのが、大変なノウハウなのだそうです。慎重に組み上げた新しい梱包方式なのだそうで、日本の企業が持っています。

なので、各国が自国で液晶を生産しようとすれば、日本からこの液晶用の大型ガラス板を輸入することになります。

中国では2003年に7800万台のテレビを生産していますが、全てブラウン管つきのテレビであり、液晶もプラズマテレビも1台も生産していません。

ただし、ブラウン管つきテレビを1年で7800万台、冷蔵庫を800万台も生産していますから、供給過剰で、中国国内でも値崩れを起こし、テレビなどは店頭でも値札をつけられない状態のようですね。

デフレの元凶と目される中国ですら、すでに生産過剰により、誰も正札で買う人間がいないという、デフレ現象が進行しているのだそうです。


また、ヨーロッパでは、

今までは、港湾作業に使うクレーンはヨーロッパ域内企業が供給していたため、日本からの輸出はなかったのだそうです。ところが、

各国の各港で港湾作業の合理化を進めるには、どうしてもこの日本製のクレーンが必要になり、輸出され始めたのだそうです。日本製のクレーンは全てコンピュータコントロールするものです。

現在の大型貨物輸送船では、大型コンテナを8000個も積み込むのだそうです。そのときに、輸送船のバランスを考えて重いコンテナを下に、軽いものを上に積む作業は人間ではできずに、コンピュータで管理する。これができるのは、日本製のクレーンしかないのだそうです。

そして、積み込む際に、ICタグを商品1つ1つにつけます。すると、コンテナの中身が一目瞭然になり、流通業界の改革が進むといわれます。

また、全世界に移送される商品1つ1つの出所と宛先が明確になりますから、テロや犯罪などに結びつく不明物が浮き彫りになる利点もあるわけで、このICタグつき商品でないと今後は納入できなくなる時代になるといわれます。



■19世紀の先例

こうして見てみると、デフレ期を乗り切るには、企業は次世代の技術開発、その技術を駆使した商品開発が必要であり、個人では何らかの自己投資をしていくことが必須であることが分かります。


このデフレ期は、


毎年物価が下がり続けるわけですが、世界全体の経済活動自体が縮小するものではありません。

「デフレ=不況」の図式を鵜呑みにしている方は不思議な感じがするでしょうが、実は、まったく逆であり、このデフレ期に経済活動全体は大きな成長を遂げていくものなのです。

先週のコラムでも触れた、19世紀後半から20世紀初頭までのデフレ期を例にとっても、世界経済はこの時期に大飛躍しています。

1873年から1896年までの24年間、毎年2%強物価が下がり続け、消費者物価はこの24年間でピーク時の40%にまで下がったと言っておられるのは、経済評論家の長谷川慶太郎さんです。

この間、凄まじい物価下落が続く中で、世界全体の貿易額は1869年の8億ポンドから1896年の39億ポンドへと約5倍へと膨らんでいます。

この間、世界全体の農産物生産量は約3倍へと拡大し、砂糖の生産量は600万トンから6000万トンを超えて10倍以上に。

そして、砂糖の価格をみれば、この24年間でピーク時の1/4にまで下落しています。

「砂糖」の歴史はイスラムのコラム[砂糖入り紅茶]で取り上げました、ご参考にどうぞ


こういった正反対の成果が出るのがデフレ期の特長であり、

今回も、基本的に同様の展開が予想されるわけです。

そして、今回のデフレ期は、アメリカの1極支配が続き全世界を巻き込む大戦争が21世紀前半には起きないと予想されるため、さらに長期間続くだろうと思われるわけです。

その間、次々と、次世代世界の基調となる新技術が開発され、それに従った社会システムも新ビジネスも続々と登場することになります。

....どこから出てくるのか?

....だからこそ、全世界が日本を見る目は熱いのですね。

何とも楽しみな時代が到来しているわけです。私たちは、何という時代に巡りあわせているものでしょうか?

この智慧コラムも、読者の方々の自己投資にふさわしい情報の質を持っていたいものだと考えます。

来週は、19世紀の世界的なデフレ期に開国した日本を、経済の面から見てみます。お楽しみに 
 <Rei>

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