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■進む、日本の脱皮 【2004年11月15日】
ダイエー&西武 / 株式の持ち合い / 株券が消える日
ケリー候補も退場し、アラファト議長も去り、
日本ではダイエーと西武(コクド)の話題に光が当っています。
刻々と世界が動いていることを実感させられる週ですね。
今回は、戦後日本経済の枠組みが
大きく変貌している一端をみてみます、おつきあいくださいませ。
■ダイエー&西武
この2社の成功は、20世紀後半というインフレ基調の社会経済の枠組みの中でなし遂げられてきたものだなあ、とつくづく感じられたのが、
今回報道されたダイエーと西武の姿でした。
ダイエーの経営手法は、徹底したインフレ活用をベースに組み上げられていると、経済専門家から指摘されている通りです。
出店したお店の利益を担保に、銀行から資金を借り入れて、次の店舗用地を入手してお店を開き、その利益を担保に銀行から資金を借り、さらに次の店舗用地を入手してお店を開き..というふうにして、短期間のうちに多店舗展開を成し遂げ、一気に大企業に成長したのがダイエーでした。
銀行から借り入れた店舗用地用の資金=借金は、インフレ社会経済の枠組みのなかでは、年々土地の評価額が上がるために、借金の実質負担は年々下がることになるため、利益も順調に上がるなら、充分に返済可能なものになるはずでした。
このダイエー経営手法が立ち行かなくなったのは、バブル崩壊の時です。
土地の値段が上がりすぎだとして、政府による不動産取引総量規制という、需要と供給のバランスを人為的に規制して地価を強制的に下げるという政策を取ったために
ダイエーの持っていた店舗用地の地価も下がり、銀行への返済が不可能になっていきました。
借金して(=銀行から借り入れて)多店舗展開して、それを繰り返していますから、銀行はダイエーという膨大な不良債権を持つことになったわけです。
ダイエーの経営手法は地価が必ず上がっていくインフレ時には可能ですが、年々地価も物価も下がるデフレ期には全く通用しない手法なわけです。
ですから、この10年間
ダイエー再建の掛け声が出たとはいえ、なかなかこの負債は解消できないほどの、巨額なものになっているわけで、銀行も身動きが取れませんし、
とうとう、民間での自力再建の道を断たれ、再生機構、つまり公的資金=税金を使った経営再建を余儀なくされています。
ダイエーホークスもソフトバンクに売却されることになり、
いまや、
ダイエーは、アフリカの草原に置かれたゴチソウ状態にあり、早い者勝ち、強いもの勝ちでおいしい部分から食いちぎられていく羽目に陥っています。非情なものですね。
ダイエー再建に努力してきた関係者は無念でしょうが、
ダイエーの経営の何が間違っていたかといえば、やはり
「まず借金して店舗を出す」という借金経営手法、借金&返済の自転車操業を経営手法にしている点でしょうね。そして、「安売り」戦略です。安売りは年々物価が上がるインフレ期には魅力ですが、デフレ期に安売りを販売戦略にしたら、自滅してしまいます。
ユニクロなども、安売り戦略をすでに捨てて転換していますね。
こういった基本を変えない限り、健全で長続きする社会的に信頼される経営ができないですし、デフレ期にはまったく歯が立たなかったわけです。
この、「まず借金してでも土地を買えば、必ず地価が上がって儲かる」という考え方は、戦後日本の基調でした。
個人でも、「まず借金してでも土地を買えば、必ず地価が上がって儲かる」ので、借金して持ち家を建てた方が有利だといわれてきました。それが、インフレ時代の蓄財法だったわけです。
ダイエーの切り分けがこれから始まり、落日のダイエーの悲哀をみることにはなりますが
これは、日本がデフレ経済に転換していく上で避けては通れない関門、インフレ企業経営の後始末なわけです。
■株式の持ち合い
もう1つの西武(コクド)も、いろいろな意味で戦後日本の成功企業の代表格です。
戦後、焼け野原となった東京や各地で、土地を買占めた西武(コクド)も、戦後インフレ時代の地価上昇に乗り、一大資産を形成しました。
旧華族などが手放した土地・屋敷を安価で入手し、ホテルを建てて「プリンス」という冠を被せてホテル業に乗り出し、鉄道事業などなどに進出していったわけです。
そういった意味でも、先見の明があったわけですね。
ところが、いま
その西武(コクド)は、株式の記載違反などが発覚して、東京証券取引所から株式上場を取り消される羽目に陥り、
西武グループ全体の組織改変も含めた、大変革を余儀なくされているわけです。
西武グループの改革派は、「ふつうの会社になりたい」というのが合言葉だそうで、筆者はウーン!と唸ってしまいました。
というのも、
ちょうど最近、企業取材を担当したのが株券を扱う金融証券業界のある会社で、日本の株式の特徴が話題に上っていたからなのです。
戦後、日本にある「株式会社」は、事業を始めるにあたり、土地を担保に銀行から資金を借り、スタートしていました。株式をいきなり上場して広く一般投資家からの資金を集めることはできませんし、気軽に利用できる制度も整備されていませんでした。
銀行は、土地を担保に取り、その事業が失敗したら担保の土地を転売して、インフレですから必ず利益が出て、負債も回収できたわけです。
ですから、企業経営者にとっては、銀行とどう親しく付き合い、パイプを太くするかは、資金調達というかなり重要な「社長の仕事」だったわけです。
となると、
新規事業を展開するときなど、増資するときなどは、自社株を取引銀行に持ってもらうことが、企業にとっては1番の安全策であり、取引銀行に自社株を持ってもらえるということはそれだけでかなりの信用があることだったわけです。
すると、銀行は、その企業の業績が悪化したからといって、ムゲに「融資しない」とは言えなくなります。融資しないでさらに業績が悪化すれば、銀行が持っているその株券も評価が下がり目減りしていくからです。
こうした際の担保が土地だったわけです。
こうした「株式の持ち合い」は企業と銀行間だけではなく、企業と企業間でも行われ、株式を持ち合って企業同士が支えあう姿が多く、それが、日本の金融証券業界のひとつの特徴になっているということなのです。
これも、インフレ社会経済が基調になっていた時代の仕組みなわけです。
となると、
持ち合っている株式は、大体が、企業の金庫に保管され、動かなくなり、塩漬け状態になり、流動性は限りなくゼロに近くなるということになります。
そして、地価上昇の恩恵を受けつつ、金庫の中で自然と資産が膨らんできたわけです。
西武(コクド)のように、自社株が他人・他社に渡るのを嫌い、同族内で所有したい企業は、結局、身内の範囲で株式を持つことになるために、今回のような自社株の所有比率違反を犯すことにもなるのでしょうね。あまりにも、長期間、塩漬けしてきたために、よく分らないうちに違反しているのでしょうが、
問題は、こうした閉鎖的な「株式を持ち合って身内で所有する」考え方自体が、
広く一般の不特定多数から投資という形の資金を得て事業を展開して利益を還元する、「株式発行」という公益性の観点を持つ趣旨からは外れているのだと思われます。
■株券が消える日
日本国内で、証券や株式の保管と振替の業務を行う「ほふり(略称)」という会社があります。
株をやる方は知ってらっしゃるでしょうが、やらない方には、チンプンカンプンという企業です。
どういう企業かといえば、http://www.jasdec.com/
日本の株式会社が発行した株券や証券を売買するときに、株券や証券というペーパーを「ほふり」に預けておき、毎回売主と買主間を移動させなくとも金額だけを振り替えて売買できるようにするという業務を担当しています。
昔なら、買った株券は、タンスや金庫の中に大切に個人で保管して、売買時には株券と金銭がやりとりされていました。
金融市場が世界規模に拡大し、日々、ものすごいスピードでビジネスが展開する今日の世界では、IT化の進展もあり、株価変動の要因となる情報もあっという間に世界中に伝わります。
こういった変化に即応する株券や証券の売買システムを金融業界全体で取る必要が出てきたわけです。
株を売ることになり株券は渡したけれども、相手に渡って売買が成立する前に相手がドロンしたり、倒産したりする場合もありえます。株式取引のこういったリスクをなくして安全な取引ができるようになるわけです。
ですから、この、証券や株式の保管と振替の業務を行う団体は、たいてい、1国に1社あるだけです。2つあっても混乱するだけです。ヨーロッパの小国(ルクセンブルクなど)になると、数カ国で1社を共同で運営したりもするそうなのです。競合他社のない、とてもユニークな団体です。
日本でこの業務を担う企業のことを、略して「ほふり」といいます。
この日本の「ほふり」に、現在預けられている株券・証券は、日本の証券取引所に上場している会社の株券の65%なのだそうです。
「65%」という数字が果たして大きいのか、小さいのかですが
アメリカの「ほふり」ともいうべき機構には、全発行株券の90%以上が預けられているそうですから、
ここからみても、いかに、日本の企業間の株の持ち合いが多く、各企業の金庫にお互いの株券が塩漬けされているものかが推察できますね。
売買する意思がありませんから、各企業の金庫の中に保管しておくだけでよく、「ほふり」に預ける動機がないわけです。「ほふり」に株券を預けるということは、将来的な売買を想定していることを意味するからです。
今回の西武(コクド)の株売買も、きっと金庫に眠っていた株券なんでしょうね。
日本企業の株券が、お互いの企業存立の安全弁として機能する面はあるとしても、もう少々、株式市場が活性化して個人投資家も手が出せるようになるといいのでしょうね。
そして、デフレ期に転換したため、企業全体の株資産も全体で仲良く縮小してしまったわけです。
こうした、日本企業の金庫に眠る塩漬け株券ですが、
5年後に株券をペーパーレスにする法案が2004年春に国会を通りましたから、5年後には、株券というペーパーがなくなり、コンピュータ上に株数を記帳するだけで「ほふり」に100%預託されているのとまったく同じ状況になるといいます。
今回の西武(コクド)の失態をみて、株式保有比率を再確認して、塩漬け株券を久しぶりに取り出す企業も出ているのでしょうね。
ダイエーといい、西武(コクド)といい、インフレからデフレへと社会経済の枠組みが変化したことを実感させられるできごとですね。
来週も、時事テーマでお送りします、お楽しみに <Rei>
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