
|
|
このニュース、この出来事、このテーマ、このトレンドをどう見るか。
経営やビジネスを智慧の視点から見ると..
-----------------------
■中国野菜騒動の今後 【2002年9月22日】
「農薬」にうとい中国 / 日本の検査方法を教えてほしい / 中国の毒菜=ドッチョイ騒動 / 今後の行方は..
■「農薬」にうとい中国
今回の農薬問題から中国関連資料を当たるうちに、問題の根深さと、中国政府の現時点での対応の問題点も見えてきました。その根本の原因は、やはり中国人がまだ「農薬」というものをよく「知らない」ということです。
私たち日本人が「農薬」の怖さを知っていったのは、いつのころでしょうか。
真っ白になるまで果物にかけられた農薬に疑問を持ったり、化学物質や農薬の実態が徐々に明らかになったり、合成洗剤による環境破壊、河川や海の生物の奇形、アレルギー体質の増加など、こうした残念な状況が重なっていき、日常の暮らしの中でひとつひとつその怖さを知っていったという経緯があります。
私が子どものころ、果物は皮ごとガブリと食べてました。手や服でちょっとこすって食べる、映画のシーンのようにです。果物は皮と果肉の間に栄養があるから食べなさい、と親が言ったような気もします。皮をむいて食べるのは、暮らし向きの良い家だったように思います。そのうち、真っ白になるほど農薬をかけたものが出まわるようになり、果物は必ず洗って農薬を落とせるものは落としてから食べるものになりました。そのころには、家にも合成洗剤が入っていました。やがて、果物は皮をむいて食べるものになっていき、いまでは、べったり農薬がかかってなくとも、効果的に使われていることは常識ですから、無農薬表示のあるものでなければ、果物の皮を料理には使いません。
このように日本が変化するまで、40年ほどかかっています。こうした私たちの感覚からすると、中国の農薬への対応は不誠実にも見えますが、中国の検査当局も、農民も、肥料や飼料の販売会社も、中国や香港などの貿易会社等も、農薬の使い方から毒性まで、農薬についての知識が全般的になさ過ぎることが、今回の問題を引き起こしている原因のようです。
■日本の検査方法を教えてほしい
週刊農林2002年7月5日号によると、今年の6月27日に、「農水省と厚労省が中国に残留農薬検査徹底を要請した際に、中国側は重点野菜と検査法の伝授を日本側に求めた」とあります。
つまり、日本の厚生労働省と農林水産省が合同で現地調査団を派遣して、中国側の検査官に、出荷前にどんな検査をしているのかと問い正したところ、各地方でやっているが、国全体の検査結果のデータはない、と答えたそうです。
そこで、日本の調査団は、残留農薬違反となった中国野菜のリストを渡して、検査と農薬規制の強化を依頼しています。
すると、中国側は、「日本がおこなっている残留農薬検査は技術的に難しいから、重点検査項目を言ってほしい。また、日本と同じ検査をしたいので方法を教えてほしい」と申し出ていたといいます。
また、しんぶん赤旗2002年7月20日付の記事中で、中国の週刊誌「眺望」28号(7月8日付)を紹介しています。
それによると、山東省安丘市農業局の副局長の話として、「中国に統一した完全な国際規格に合う検査基準がないことが重要な問題だ」と指摘していること。
さらに、中国で合格したものが日本に通関拒否されたことに対して、「検査関連部門が、日本が1960年代に制定した野菜品質標準を探し出してきて、これを中国側の現在の標準にしてごまかしている」と非難していること。
また、関係者の話として、「表面的には品質問題だが、核心は体制問題であること。検査や輸出などの体制問題が解決しないと品質の問題も解決しない」と指摘していることを紹介しています。
ことの真相はわかりませんが、いずれにしても、中国問題の核心は体制問題に行きつくことは間違いありません。中国には自由な言論がなく、マクロの情報に乏しく、各自の情報の裁量内でやっているのだと思います。
農薬問題に関する日本のテレビの現地取材報道などをみても、(日本)に納品した後になって今ごろ残留農薬なんて持ち出されても..もっと早く言ってくれないと、と面食らった様子の中国の会社社長が出ていました。
■中国の毒菜=ドッチョイ騒動
こうした断片情報からも、農薬に対する無知と、管理の不備、教育の不徹底ぶりがうかがえます。中国で農薬が使われ始めたのは20年前ごろだそうですが、その普及と正しい使用法と管理にはかなり手を焼いているのが現状のようです。
1990年代に入り相当数の中毒患者を出して社会問題となり、95年ごろまで続き、中国政府当局が厳しい規制に乗り出して、ようやく年間数件の発生にまで減ってきている(新聞「農民」2002.4.1付け)といいます。
中毒患者数の実態には諸説があり、わかりません。中国政府に、使用農薬の検査データも使用実態データも、統一基準値も、何の公式資料もないようなので、巷の噂以上の資料はないのが実情だと思います。年間400〜500人の中毒患者、いやPAN(国際農薬監視行動ネットワーク)という国際NPOによれば、95年で5万件近い農薬中毒が起き、3,200人が死亡、などなど。何を根拠に出ている数字かはわかりません。
元中毒患者という女性への先の日本の番組のインタビューでも、「その後は野菜は洗って農薬を流して食べるようにしている、それまで誰からも野菜の農薬を洗い流せと聞いたことがない..」とコメントしていましたが、中国の一般市民の農薬への理解もこの程度のようです。
■今後の行方は..
今後、中国政府はどう対応するでしょうか。
6月には、日本の検査方法を教えてください、と言っていた中国はその後、日本の検査方法自体を非難し、報復政策をとり始め、日中の新たな火種を作りつつあるようにみえます。この変化には、窺い知れない複雑な中国体制事情がありそうです。
しかし、150万トンの日本向け野菜の輸出額を中国が手放すはずがないので、紆余曲折はありながらも、中国は日本の検査方法を採用していくのではないかと思われます。公式には日本の検査方法を非科学的だと非難して、対抗して他の日本の品目の輸入関税を上げたり、輸入禁止をしながらも、野菜輸出の実利は欲しいので、日本の検査方法に合わせてあ.げ.る。これが、非常に現実的な判断をする中国の対処方法のような気がします。
すでに、中国野菜は、農薬問題が表面化して以来、6%以上日本の輸入は減少しているといいます。日本の商社や食品会社でも、農薬を使わない契約農家のみに絞ったり、産地を限定したり、農薬検査を義務付けたりといった対応に動いているようです。
また、他国の動きでは、EU(欧州連合)が今年の1月に、中国産エビから出た抗生物質と、管理体制の不備を理由に、中国産の水産物や肉などの輸入を禁止した、との報道があります(asahi.com
5/6付け)。この中国の食品問題は、野菜だけじゃないんですね。日本も、輸入禁止できるよう、食品衛生法の改正に動いていますが、法案が通るのは来年の通常国会とか。それまで、当分、消費者が自衛することになるようです。
その間、日本の関係当局には、通関でのサンプル検査だけではなく、全中国野菜への検査をお願いしたいと思います。また、市場へ出まわる前の検査体制を採っていただかないと、消費者が買って食べたあとで発表されても後の祭りです。検査要員を増員し、残業もし、民間企業へ検査を委託してもいいではないですか。
日本の農薬基準を中国側が守ったとはっきり分かる野菜は通関を通すとして、証明書類もない野菜は水際で検査するしかないのではないでしょうか。生鮮野菜はしなびて商品価値がなくなる危険性があり、中国と商社の補償問題が出るでしょうが、中国と日本の商社等に、不合格になった野菜は市場に出さないという態度がはっきり伝われば、中国も日本商社等も検査方法をクリアしようと前向きに努力していくのではないでしょうか。
<Rei>
|