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■漢字異聞
(2)  【2003年12月14日】 (1) (3)

文字コミュニケーション / どう見る?300万部 / 北京語1色に染まるのか


前号から、中華圏の最大のネック、漢字を取り上げています。
今回は、漢字習得の難しさについてです。



■文字コミュニケーション

筆者は、中国語はどれも読み・書き・話す3拍子そろって、できない、門外漢です。

中華圏の漢字について資料(東京外国語大学名誉教授・岡田英弘氏の著作『この厄介な国、中国』『やはり奇妙な中国の常識』)を読みながら、ある光景を思い出しました。

毛沢東の文化大革命が起こったときに、中国の人々が手に手に赤い毛沢東語録を持って、口々に声高に叫ぶ姿。あれは、一体どういう行動だったのか?

それに、

中国語を話す北京のテレビ局アナウンサーの語調が、とても硬く、攻撃的で、肩を怒らせているように感じられるのは...。

1国のリーダーの肩書きが、なぜ「総書記」なのか?

個人的な、素朴〜な疑問ですが、この「漢字」が深く関わっているように思われます。

先週書きましたが、中国語は、表意文字の漢字を使用した、文字コミュニケーション(手で書き、目で読む)言語です。それゆえに、話し言葉の違う多民族との意思疎通が可能となっています。

日常、地方言語で話している人々は、学校で公用語の北京語、その地方の公用語(上海語、広東語、、福建語、潮州語、客家語、海南語などなど)での読み書きを習います。

なので、

知らない中国語は、音声だけを聴いても、何を言っているのか分からない、というのが中国人です。

ふだんの話し言葉は、文字表現するのが困難なものです。漢字に割り当てられた音を拾って当てはめるしかないからです。話し言葉の音に忠実に漢字を当てはめようとすれば、極論すれば、書いた本人以外は読めなくなります。

そして、漢字を素材として使用しながら、中国語の各言語はまったく別系統の言語体系を持っています。一例をあげれば、上海語と広東語は中国南部一帯のもので、ともにタイ語属に属するのだそうで、北京語など北方言語とはまったく言語系が違います。

では、この同じ南部のタイ語属の上海語と広東語ですが、互換性があるのかというと、ほぼ100%に近く、一致しないのだとか。

そもそも、代表的な北京語、上海語、広東語、福建語、潮州語、客家後、海南語などといっても、その中で方言がもっと細かく分かれていて、住む地域が少し違うと、もう通じないのだそうです。

なので、人々は、各公用語の「読み書き」を学校で習います。

これは、実は大変なことです。ふだんに考えるいろんな物事を表現するのに、外国語を習って表現するわけです。

英語で四苦八苦した方ならお分かりでしょうが、外国語で自分の考えを自由に読み・書き表現することは、かなりの言語センスが必要です。

論文を外国語で書こうとしたら、かなりその言葉に習熟しなければできません。斬新でオリジナリティのある精神活動を外国語で表現して、さらに、説得・感服させるだけの表現力を持つとなると、どうでしょう。

くらくらしませんか? 外国語苦手は、別に日本人だけではなく、中国の人々も同じです。

これだけみても、中華圏という一枚岩があるかのように受け取るのは幻想だと分かります。


■どう見る?300万部

1999年1月度の数字だそうですが、人民日報の発行部数です。華東版、華南版、海外版を合わせた部数です。基本は北京語だと思いますが、華東版、華南版が上海語、広東語なのかは不明です。

約13億人の人口中、学校で北京語の読み書きが上手くできた各分野のエリートの数だと、単純に見ると、人口中の約433人に1人が、人民日報を読めるエリートなんでしょうね。

10万人規模の1地方都市では230人が人民日報を読む計算です。

外国語での読み書きが、いかに難しいものか、この数字を見ても分かるようです。

中国には「3・6・9 問題」があるといわれます。未就学が3割、小学校で6割、その上に進学するときに9割が落ちこぼれるのだとか。この「漢字」習得がいかに難しいかが偲ばれます。

いま中国は、北京語を公用語にしていますが、ようやく、35%ほど=4億5500万人の普及率に達したようです。この識字率ですが、ユニセフの基準では名前を書ければ字を知っていると計算するのだそうで、その基準で出している数字かもしれません。人民日報300万部という数字は、少ないですね。

ちなみに、日本の新聞発行は、1億1000万人中、日刊紙総発行部数で約5,320万部、朝刊のみで約3,390万部です。(新聞協会業務担当調べ 2002年10月)

新聞は「読み」だけですが、北京語を自由に「書ける」人はもっと少ないでしょうし、これからの中国の知識層なんだと思われます。


■北京語1色に染まるのか

北京語を公用語とする中国で、北京語圏以外の中華の人々は、今後どうするかです。

今の北京語は、話し言葉をできるだけ表記するものなんだそうですが、北京語圏以外の人々にとっては、外国語であることに変わりはありません。

・生まれたときから話している言語で、文章を書けないという不便。
・外国語でしか、自分の考えていることを読み・書きできない不便。

常にもどかしく、微妙な感情をピタリと現す言葉に自信がもてずに使うとしたら、これが、人間の精神活動に、思索表現に、ふだんの振舞いに、出ないわけがありません。

まず、ぴったりの漢字を使いこなせないと、その概念を表現できないため、半分失語症のようになるでしょう。外部からみれば、単にその人の知性が低いようにも見えます。

心の中の思いは、ある文字のカタチを与えられるからこそ、表現できるものですから、逆にいえば、漢字によってその精神の発達と表現能力が阻害されているわけです。

ここが、「漢字」が中華圏のネックとなるところだと思われます。

攻撃的で、断定的で、身振りも大きい中国人というのは、案外、こうした外国語を使わざるをえない表現のもどかしさから来ていることもありそうですよ。

文化大革命の赤衛兵が、毛沢東語録を片手に叫んでいましたが、毛沢東もあるマイナーな地方語を話していたのだそうで、彼の思想は語録として北京語かに翻訳されたものだと思われます。

それを、各地方の赤衛兵が、外国語ですから、一生懸命勉強したんでしょうね。それもあって、片手に持つパフォーマンスになったのだと思います。当時は、毛語録以外の書籍のある図書館の焼き討ちもあったそうで、毛沢東による焚書の一種ですね。

科挙同様に、時の権力者の言語を自由自在に読み・書きできる人が、その時のエリートになる。この歴史的なパターンをそのまま、現在も踏襲している中国です。

国家主席の肩書きが「総書記」なのも、結局、漢字を使いこなして政治を行える超エリートという意味ではないかな、と想像しているのですが..。

実際に会議の記録をとる人物は別人でしょうが、そうして完成した公文書に最終的に責任を取るのは、「総書記」なのでは?

ここから見ても、いい意味でも、悪い意味でも、中国は「文字」の国なんですね。

北京周辺とは主食も違い、言語も違う、上海地域や広東地域などの発展している沿岸部地域が、このギャップのままに今後もいくのかどうか、です。

もっと発展した場合、自分たちで充分やっていけると中国を分裂させたり、民主化の末に連邦制をとる可能性は捨てきれないと思います。国民国家として現在の勢力版図のまま無事に民主化するには、言語の面からも難しい課題を抱えています。

来週は、中国語の近代化の取り組みを見てみます、お楽しみに 
 <Rei>

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