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■漢字異聞
(1)  【2003年12月8日】 (2) (3)

中華圏の誤解 / 漢字のワナ / 論語は中国人にも外国語 / 多民族の統治法


中国といい、台湾といい、いまひとつ分かりにくいのが、言語です。
中華圏の国々のキーワードになる漢字をとりあげます。



中華圏の誤解

どの民族もそうですが、民族の核のひとつは、その言語です。

領土がなくなっても、民族がいてその歴史と文化を語る自分たちの言語があれば、いつの日か建国できる望みがもてます。独自の文化を子孫に伝承していくのは、やはり共通の言語です。

ですから、

独立していない地域の人々が、そのアイデンティティを確立していくのに、どの言語を共通の言語にしていくのかは、かなり重要な要素になると思われます。

明治維新で近代国家へと転換した日本でも、それまでの各藩ごとの地域言語では新生明治時代の国民的なコミュニケーション言語としては役不足でした。そこで、共通語となるものを作り出していきました。

また、

戦後のテレビの普及などは、それまで残っていた地方語を壊滅的なほどつぶしたとも言われます。が、反面

今の日本人で、日常生活上、感情・思想表現上、意思の疎通に不自由を感じる人はまずいません。島国ですし、小さいですし、全国どこでもどの新聞・テレビを見てもコミュニケーションが取れるため、それがフツーのことになっています。

ところが、

中華圏世界となると、中華思想とからみあって、ことは一気に複雑になります。

「日本人は中国の漢字をただで使っているけれども、我々中国人は文化の交流だから別に使用料を取らない」

中国のコピー商品問題についての席上で、この発言が出たといいます。これを言われた日本人政府関係者は、何も言い返さなかったようですね。

中華思想の巧妙なところが良く出ていると思います。

周辺の蛮族を統治する手練手管に長けていますし、そのポイントは、相手を恭順させる手として、相手が反論できないように道徳を持ち出すことなんだそうですね。

・漢字をただで使っている日本人、ただで使わせている太っ腹な中国人

先ごろの宴会芸も、結局は、反論できない道徳を持ち出していますね。

これ式で考えたら、中華周辺国は、この漢字の呪縛から逃れて独自の言語を持たないと、独立はおぼつかないのではないか、と思えてきます。


■漢字のワナ

中華周辺地域の台湾では、公用語、つまり新聞や政府文書などの書き言葉は北京語を使用しています。

が、日常会話は、台湾語(福建語中心のもの)を使用しています。

つまり、毎日話す話し言葉と、読み書きする言語が違うのです。

これは、台湾だけの問題ではなく、中華圏の人々は、常に話し言葉と読み書き言語が違うなかで生きています。

育つときに両親などから教わるのは話し言葉ですが、中華圏の人々は学校に行くようになると、別な言語体系の読み書き言葉を習うことになります。まったく外国語を1つ習うのと同じなんだそうです。

つまり、話し言葉を、そのまま文章言葉にはできないわけです。

これは、「話す言葉」と「書き言葉」がほぼ同じように表現できる言語表現体系の英語圏の人々や日本人には分かりにくいことです。

中国映画をみると、この辺の複雑さがわかります。北京語の映画なら、広東語などの字幕と、英語テロップが並びます。

実は、この、中華思想の核として強烈な影響を与えている「漢字」には、漢字ならではの問題があります。

それは、表意文字の限界ということなんです。


■論語は中国人にも外国語

漢字は、表意文字だと言われます。漢字1個に、1つの意味と、1つの発音が割り振られています。

山、川、人、などなど、意味のはっきりしたシンプルな漢字は分かりやすいですね。

ところが

熟語が出てきます。その意味と、使い方、発音がはっきり分かっていないと実は使えなくなります。

人間の複雑な思考を表現する熟語を作ったとしても、読む人が、その熟語の意味をあらかじめ分からない限り、意味を伝えることは不可能になります。

漢字には、同じ発音のものが多いといわれますが、同音の熟語を区別するのに、アクセント、イントネーションを使っています。こういった使用上の約束事や、文法が各地方ごとに分かれたらどうなるか、です。

漢字をコミュニケーションの素材に使ってはいるけれども、まったく言語体系の違う言語が出来上がります。

例えてみれば、同じアルファベットを使いながら、違った文法と発音をもつ英語と、ドイツ語、などのヨーロッパ言語の広がりと同じような言語群ができあがるというわけです。

北京語、広東語、福建語、上海語、などなどの言語は、同じ漢字素材を使っているというだけで、別のものなわけです。

こういった公用語を学校で習い、日常の会話は、地域のさらに一方言を使っているのが、中華圏の人々です。

なので、日本人が漢文の時間に習う論語などの古文漢文が分からないのと同じように、彼ら中華圏の人々も、日常語ではない論語などを習うわけです。あの漢詩なども、習わない限り、彼らも分からないものなんだそうです。

特に、音だけを聞いたら、まったく何を言っているのか分からないものなんだそうです。


■多民族の統治法

中国大陸は、古来、さまざまな民族が入れ替わり立ち代わり勃興しては、王朝を建てて、しばらくすると他民族から追われて滅亡するという繰り返しです。

中国民族(漢族)といわれる人々が2000年間継続して住みつづけているのではないわけです。

ですから、そういった多民族を交易を通して統治したのが各年代の中華の各王朝ですから、漢字は、もともと多民族の誰もが分かる言語体系を持つ必要から発生したのだと思います。

普段の話し言葉はまちまちでも、文書は同じ漢字と特定の文法で統一されていれば、意思の疎通ができたのだそうです。

国を治める役人全員に、統一した文法と文章作法を持たせて、皇帝からの通達などが全国に行き渡るようにする必要性から、科挙制度が生まれたとも言われます。

つまり、漢字とその文法は、最初から読み書き言葉として発達しています。日常会話とは遊離したものなんです。漢字を使うということは、それだけで、中華の政治・経済の影響下にある、かつてあった、という証拠なわけです。

漢字が表意文字だということは、そういうことなんですね。

ですので、

コピー商品問題で手を焼く日本に対しても、平気で漢字の使用料の話を出してくるのだと思われます。

中華周辺国は、どこでも、必死になって漢字を自国言語になじませようと努力してきた歴史です。日本もそうですし、ベトナムなども、かなり漢字をベトナム語化させています。取り込まれたくないですから。韓国は、文章言葉(漢字)を捨てて、話し言葉のみ(ハングル)にシフトしてしまいました。

独自の言語体系を持つ方向にいくのか、中華の文語・口語乖離言語でいくのか。

この辺の言語事情を、台湾の人々がどう考えているのか、聞いてみたいところです。 <Rei>

来週は、中国語の限界のつづきです、お楽しみに

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